海外コラム

国外転出時課税(出国税)

国外転出時課税とは、一定金額以上の有価証券等の資産を所有する者については、国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます)時に、その資産について譲渡等があったものとみなして、対象資産の含み益に所得税が課税される制度です。「譲渡等があったものとみなして・・・課税される」ということは、保有する有価証券を売却しない場合であっても、売却したものとして課税されるということです。この制度の対象者は所得税の確定申告等の手続を行う必要があります。ただし一定の手続をすることで、納税猶予制度や税額を減額するなどの措置を受けることができます。

株式等の売却益については、株式等の売却等により実現した時点で、株式を売却した納税者が居住している国において課税されることが原則となっています。ただしシンガポールや香港などの国・地域では、現地の税制上では株式売却益が非課税とされています。また租税条約により、日本側でも場合を除いてその売却益に対して課税されることはありません。したがって、含み益を有する株式等を保有したままこういった国・地域に移住し、移住後にその株式を売却することにより課税逃れを行うことが可能となっています。
このような課税逃れは日本だけでなく世界的にも問題視されており、多くの国において課税逃れを防止する観点から、国外転出時点の未実現の所得(含み益)を国外転出前の居住地国で課税するようになってきています。そこで、日本においても、主要国と足並みを揃え、一定の国外転出者に対して、国外転出直前に対象資産を譲渡してこれを同時に買い戻したものとみなして、その未実現のキャピタルゲインに課税する譲渡所得等の課税の特例を創設することとされました。

適用対象者
国外転出の時において、次の①及び②のいずれにも該当する居住者が、国外転出時課税の対象者となります。
① 所有等している対象資産の上記䐳又は䐴の金額の合計額が1億円以上であること
② 国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること

対象資産
① 有価証券、匿名組合契約の出資の持ち分
② 未決済のデリバティブ取引
③ 未決済の信用取引等

納税猶予
国外転出時課税制度の適用対象者は国外転出時に関しての確定申告をする必要があります。ただし一定の手続きをし、みなし売却益に関する所得税額及び利子税額に相当する担保を提供した場合には、5年間の納税猶予を受けることができます。国外転出時課税制度は未実現の売却益に対して課税するものです。よって納税者に担税力が無い可能性に配慮し猶予を認めたものです。

課税の取り消し等
例えば海外勤務等の事情によって一時的に国外転出する場合等への配慮として、国外転出時に保有していた株式等を帰国まで保有し続けた場合には、国外転出時の課税を取り消すことができます。ただし一定の期間内に帰国した場合に限ります。

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