海外コラム

外国人留学生のアルバイト代

飲食店やコンビニエンスストアでは外国人店員を見かける機会が増えています。その多くは外国人留学生であることが多いのではないでしょうか。彼らのアルバイト代は日本ではどのような課税関係になっているのでしょうか。

彼らをアルバイトとして雇用する場合、雇用者側は必要に応じて源泉徴収義務が生じます。したがって源泉徴収を失念してしまうと、雇用者側にペナルティーが課されることになります。

結論を先に申し上げると、外国人留学生の出身地国によって取り扱いは様々となります。
同じ業務内容を任せている場合であっても、中国人学生に対するアルバイト代であれば源泉徴収は不要となりますが、ベトナム人学生であれば源泉徴収が必要となります。フィリピン人学生や韓国人学生であれば、年間の一定額までは源泉徴収が不要となります。
学生側としては、確定申告することで、源泉税額を還付してもらうことも可能です。
留学生の出身国ごとに取り扱いが異なるのは、租税条約の内容に違いがあるためです。

アルバイトをしている外国人留学生に対するアルバイト代は、原則として給与所得として所得税の課税対象となります。したがって、給与を支払う側は源泉徴収義務を負うことになり、他の従業員や日本人アルバイトに対する支給する給与と同様に、源泉税を天引きして税務署に納付する必要があります。
源泉徴収にあたり適用する税率は、該当する留学生が居住者なのか非居住者なのかによって異なります。留学生が1年以上の予定で日本に滞在している場合には居住者に該当するため、他の従業員や日本人学生アルバイトと同様に源泉徴収税額表に基づき源泉徴収します。
留学生が非居住者に該当する場合には、一律20.42%となります。

と、ここまでは国内法である所得税法のみを参照した取り扱いとなります。外国人留学生の場合には、租税条約により国内法上の取り扱いがどのように変更されるのかを確認する必要があります。

租税条約にはいわゆる学生条項という規定が設けられています。学生条項とは、留学生が生活や教育のために受け取る所得については、留学先の国では免税してあげましょう、というものです。したがって生活費や授業料に充てるために稼いだアルバイト代や奨学金は、この条項を適用することによって免税とすることができます。ただし、この学生条項は国によって免税の範囲が様々であるため注意が必要です。

たとえば中国との租税条約では、生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得は日本では免税、とシンプルになっています。つまり中国から受け取った所得であっても日本から受け取った所得であっても、日本では免税となります。

一方ベトナムとの租税条約では、免税の範囲は留学先の国以外から支払われるものである場合に限ることとされています。つまり、ベトナム人留学生の場合には母国等から支払われる奨学金や生活費等は免税になるけれど、日本でアルバイトにより得た所得は免税とはならないということです。免税の範囲がより限定されています。

このように、外国人留学生に対する免税の範囲は国によって取り扱いが異なるため、租税条約を丁寧に見ていく必要があります。
なお租税条約の減免措置を受けるためには届け出が必要ですので、実務的にはこの点も注意が必要です。

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