海外コラム

海外取引の消費税②

前回の記事では、国境を越えた取引が行われた場合に日本の消費税の対象となるかどうかは、取引が行われた場所が国内か国外かで判定される旨を記載いたしました。そのうえで、取引が行われた場所が明らかにならない場合には、資産の譲渡・貸し付けや役務の提供を行う者の事務所等の所在地で判定することも併せてお伝えしました。
この考え方を「原産地主義」といいます。すなわち、モノやサービスを提供する供給者の所在地国(原産地国)をもって取引の場所と判定する考え方です。一方で、顧客の所在地国(仕向地)をもって取引の場所と判定する考え方を仕向地主義といいます。

上述の通り、日本の消費税では取引の場所が明確ではない場合には原産地主義によって内外判定をしていました。
ここで、インターネットを通じた取引についての取引が行われた場所を判定するにあたって、原産地主義によって考えてみます。

国内事業者と国外事業者が、同じ内容のサービスをともに100円(税抜き)で提供したとします。

①国内の事業者がインターネットを通じて国内の消費者にサービスを提供した場合
役務の提供を行った者の事務所の所在地は日本です。したがって国内取引に該当し消費税の対象となります。サービスの対価は税込みで108円です。

②国外の事業者がインターネットを通じて国内の消費者にサービスを提供した場合
役務の提供を行った者の事務所の所在地は外国です。したがって国内取引には該当せず、消費税の対象とはなりません。サービスの対価は100円です。

このように、従来の原産地主義によって消費税の対象かどうかを判定する場合には、国内の事業者と国外の事業者で競争上の不均衡が生じます。

そこで2015年度には消費税法の見直しが行われ、電気通信利用役務の提供に該当するものに限り、仕向地主義の考え方によって内外判定をすることとなりました。つまり、顧客の所在地を持って取引の場所を判定することとなりました。
これによれば、上述の①②はともに顧客が国内の消費者であることから国内取引として課税対象となります。このため、国外の事業者であっても日本で消費税の納税義務が生じます。また、競争上での不均衡が解消されることとなります。

国税庁HPによれば、電気通信利用役務の提供に該当する取引は、対価を得て行われる以下のようなものが該当します。
○ インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
○ 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
○ 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
○ インターネット等を通じた広告の配信・掲載
○ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
○ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
○ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
○ インターネットを介して行う英会話教室

このように内外判定基準が見直された結果、国内に事務所を持たない国外事業者が課税事業者となりますが、国外の事業者に対して日本の課税庁は直接の行政執行権限を持ちません。つまり税務調査を行うことはできません。
したがって電気通信利用役務の提供のうち「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、顧客側に納税義務を課す、いわゆるリバースチャージ方式が採用されています。
非居住者に対する支払いの際には、支払をする側に源泉徴収が義務付けられています。その源泉徴収に類似した方式といえます。

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