海外コラム

国際課税の調査体制の強化

昨日の記事でお伝えしましたが、国税庁は近年、国際課税への取り組みを重要な課題と位置付けています。日本の税負担率は諸外国に比して高いことが多いことから、海外に資産を移す等による税負担軽減の誘因がはたらき、場合によっては脱税行為や租税回避行為につながりかねません。もし税務当局がこういった行為に適切に対応しない場合には、納税者の間で税に対する公平感に大きな影響を及ぼすことになります。
国税庁は2016年には「国際戦略トータルプラン」を公表し、課税上問題がある場合には、積極的に調査等を実施するなどの対応を強めています。昨日のお伝えした情報リソースの充実に加え、調査マンパワーの充実も図られています。

調査マンパワーの充実

国税庁は国際課税に関する調査体制を拡充しています。専門部署を設置し、各種情報の収集・分析や調査事案の企画を行っています。
さらに、富裕層に関する情報収集機能を更に強化するという観点から、東京、大阪及び名古屋の各国税局に重点管理富裕層プロジェクトチーム(富裕層 PT)を設置しています。
このほか、弁護士や金融機関出身者などの専門家を採用して国際課税に係る法令の適切な解釈・適用や複雑・高度化する金融商品等への対応を図っています。

(1)国税庁国際課税企画官
2017年、国税庁は国際課税の司令塔の役割を担う国税庁国際課税企画官を設置しました。国際課税に関する指導・監督、対応策の検討の役割を担っています。
(2)重点管理富裕層PTの設置・拡大
2014年に東京、大阪、名古屋国税局にプロジェクトチームを設置し、さらに2017年に全国的な実施体制に拡大しています。富裕層 PT は国際課税にも精通し、豊富な調査経験を有する統括国税実査官(国際担当)を中心に構成されています。富裕層 PT では、富裕層の中でも特に多額の資産を保有していると認められる納税者を重点管理富裕層とし、その関係者や主宰法人、関連する法人を管理対象者グループとして一体的に管理して情報を収集した上で、その情報の分析・検討を行っています。
(3)国税局、税務署レベルでの調査体制の充実
国際調査課や国際税務専門官を設置し、国際課税に係る知識と経験の蓄積が図られています。また研修も実施され、税務職員全体の海外取引調査能力の向上が図られています。
(4)弁護士や金融機関出身者等の専門家
東京、大阪及び名古屋の各国税局において、弁護士や金融機関出身者などの専門家を採用し、国際課税に係る法令の適切な解釈・適用や複雑・高度化する金融商品等に対する課税上の問題点の解明等を的確に行っています。

国税庁が公表している「国際戦略トータルプラン」によれば、こういった取り組みにより、富裕層や海外取引を行う企業による海外への資産隠しや国際的な租税回避行為に積極的に対処していく姿勢が強く打ち出されていることがわかります。

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