海外コラム

非居住者の確定申告(所得控除)

非居住者であっても国内に不動産を残しており賃料収入を得ている等、一定の国内源泉所得がある場合には、確定申告が必要となります。ただし非居住者は確定申告やその後の納税といった納税事務については、国内の納税管理人を通じて行わなければなりません(国外から自ら電子申告や電子納税を行ったとしても、申告書や納税額が税務当局に受理されない可能性があります。2019年3月18日の記事「非居住者による電子申告・電子納税」及び3月15日の記事「非居住者の納税事務(納税管理人)」をご参照ください)。

非居住者の所得についての確定申告は、基本的な計算構造は居住者のものと同じです。ただし以下の点で異なっています。

外国税額控除の適用はありません。外国税額控除は全世界所得課税を前提とした二重課税排除のための制度です。つまり国外で得た所得(国外源泉所得)に対して、居住地国である日本と所得が生じた国である源泉地国との両方で課税されるという前提があって初めて成り立つものです。非居住者は日本では国内源泉所得のみが課税対象とされるため、その前提が成り立ちません。よって外国税額控除の適用はありません。

所得控除のうち、雑損控除、寄附金控除、基礎控除以外については適用がありません。つまり、医療費控除や社会保険控除、配偶者控除、扶養控除等の適用を受けることはできません。こういった控除は人的控除と呼ばれ、納税者の個人個人の家庭事情等による担税力(税金の負担能力のこと)に配慮して課税対象となる所得金額を減額するために設けられています。つまりたとえ給与水準が高かったり、事業所得を多く得ていたとしても、たとえば扶養すべき家族の人数が多かったり病気治療中で医療費が多額にかかっているようなら、納税を少し配慮してあげましょう、というものです。非居住者の所得計算にあたっては、こういった家庭の事情が考慮されないことになっています。これはおそらく、非居住者の居住地国において同様の配慮がなされている可能性があることや、日本の税務当局が非居住者の生活実態まで把握しようがないといった事情からそうなっているものと思われます。

したがって、もし海外転勤等により非居住者となった場合には、確定申告の際には日本と同様の控除を受けることができないことに注意が必要です(ただし滞在地国側で同様の制度が無いかを確認することが望ましいです)。

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