海外コラム

短期滞在者免税

海外勤務中の従業員が日本に一時帰国して日本で勤務した場合(例えば本社の会議に出席する等)、原則としては日本勤務分から生じた給与は日本の国内源泉所得に該当し、日本で納税義務が発生します。給与に対する課税がどこで行われるかは、仕事を行った場所(国)で判定されるからです。非居住者が日本で仕事を行った場合には、日本において20.42%の所得税(復興特別所得税を含む)が課せられます。
ただし海外勤務先でも日本勤務分の給与所得に対して現地の課税が行われるのが一般的ですので、二重課税の状態となります。それを解消するためには、原則としては現地税法における外国税額控除を適用することとなります。
このように日本でも現地でも余計な手間がかかってしまい、非常に面倒なことになります。

そこで租税条約を検討します。租税条約は国際的二重課税を排除することが目的の一つです。
租税条約には、外国で仕事をした期間が183日(つまり約半年)以下等、一定の条件(以下に記載)を満たした場合には、その外国での課税を免除するという規定があります。これを短期滞在者免税といいます。
例えば海外勤務中の従業員が日本に一時帰国して勤務する場合、その期間が183日以下であれば日本における所得税の納税義務が免除されるというものです。
また逆に、日本から海外出張する場合でも、その期間が183日以下であれば現地における所得税の納税義務が免除されることになります。
このため二重課税の問題は起こらず、外国税額控除等の手続きも不要となります。

短期滞在者免税の要件は、国ごとにやや異なる場合もありますが、主には以下の通りです。このすべてを満たすことが求められます。

1.滞在期間が一課税年度又は継続する12ヶ月を通じて合計183日を超えないこと
2.給与等の報酬が滞在地国の企業から支払われないこと
3.給与等の報酬が滞在地国に所在する雇用者の恒久的施設によって負担されていないこと

なお183日のカウント方法については、租税条約ごとに違いがありますので、相手先国ごとに検討が必要になります。

また、租税条約による短期滞在者免税の適用を受けるためには、手続きが必要になりますのでその点も注意が必要です。

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