海外コラム

国際課税のための情報収集制度

近年、国際化がますます進展している中、以前話題になった「パナマ文書」やBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの進展などにより、国際的な租税回避行為に対して、国民の関心が大きく高まっています。
したがって国税庁では、国際課税への取り組みを重要な課題と位置付けています。2016年には「国際戦略トータルプラン」を公表し、課税上問題がある場合には、積極的に調査等を実施するなどの対応を強めています。

情報リソースの充実
これまでにも何度か触れたとおり、日本の所得税法又は法人税法では、居住者又は内国法人の場合には全世界所得が課税対象とされています。つまり国内・国外のすべての所得が課税されることになっています。しかしその一方で、税務調査や資料の収集は国内で行うことが原則とされ、たとえば他国に調査官が出張して日系企業の外国支店を調査するといったことはできません。したがって、国内法や租税条約により国際課税に役立つ情報を収集する仕組みが整えられ、国際課税の実効性が確保されています。個人及び中小企業向けには以下のような仕組みがあります。

(1)国外送金等調書
国外への送金又は国外からの送金うち、金額が100万円を超えるものについては、金融機関に送金者及び受領者の氏名、取引金額等の情報提供を義務付けています。
(2)国外財産調書
合計5,000万円を超える国外財産を有する個人は、その国外財産の情報を所轄税務署長に毎年提出しなければなりません。正当な理由なく提出しない場合には、罰則や過少申告加算税等の加重措置が適用されます。
(3)財産債務調書
所得金額2,000万円超、かつ、3億円以上の財産(預金、有価証券や不動産等)又は1億円以上 の有価証券等を有する個人は、それらの情報を所轄税務署長に毎年提出しなければなりません。提出することが義務付けられています。提出がない場合には過少申告加算税等の加重措置が適用されます。
(4)租税条約等に基づく情報交換
税務当局は、租税条約を締結している国との間では、取引に関する情報を外国税務当局から入手することができます。
(5)CRS情報の自動的情報交換
税務当局は、外国の金融機関から日本の居住者に係る金融口座情報を入手しています。

個人や企業が行う海外取引については、税務署側としても国内で入手できる情報だけでは事実関係の解明に限界があります。このため、適正な課税を実現するための手段として、情報収集の制度の充実が図られています。

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