先日は、主に日本から海外投資(=アウトバウンド投資)し海外子会社が資金調達する場合には税法の観点からはどのようなことが起こるのかを書きました。日本の法人税率は他国よりも高い場合が多いため、日本で借り入れ利子を損金算入することがグループ全体の税負担の観点からは有利になるとのことでした。そして、そういった資金調達スキームを直接のターゲットとした税制は日本にはまだないことも記載しました。
とはいえ実は日本には、借り入れ利子の一部の損金算入を否認する規定があります。過少資本税制とか過大支払利子税制といった制度です。これらの制度では、海外のグループ会社からの借入金に対して利子を支払う場合に、その一部が損金不算入となります。先日も書いたように利子は基本的に損金となりその分日本の税収を減らします。ここで、支払先が日本の企業であれば受取利息として益金に含まれ、トータルでは日本の税収に影響がありません。しかし支払先が外国の場合には日本の税収が減少してしまいます。両制度はこれを防ぐための制度です。日本の会社が外国企業に対して支払う利子のうち、過大とされる部分について損金算入を認めないという制度です。つまり、インバウンド投資が主なターゲットとして想定されています。したがって、海外進出する日本企業にとってはあまり馴染みのある制度ではありません。
両制度とも否認される利子金額を算定するまでのプロセスがやや面倒ですが、そこに深入りはせずに制度の概要を以下で説明します(この制度に限らず国際税務は計算プロセスが複雑で事務負担を要するものが全体的に多いです)。
過少資本税制は、国外支配株主等に対して借入金の利子を支払う場合において、平均負債残高が国外支配株主等の資本持ち分の3倍に相当する金額を超えるときは、その超える部分に対応する利子の額について損金算入が否定されるというものです。なおここでいう利子には保証料等も含まれます。
過大支払利子税制は、関連者等に支払利子がある場合には、関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超えるときは、超える部分の金額は損金算入が否定されるというものです。調整所得金額とは、当期の所得金額に減価償却費等の一定の調整を加えて算定します。また、ここでいう支払利子にも保証料等が含まれます。なお、関連者には国内のグループ会社も含まれますが、そのような会社に対する支払利子はここでいう支払利子から除かれます。
なお、過少資本税制と過大支払利子税制の双方が適用される場合には、損金不算入額が大きい方が採用されることになります。
なお海外グループ会社への過大な利子支払を防止するための制度はもう一つあります。移転価格税制です。グループ会社間の金銭貸借では自由に利率を設定することが可能ですが、同制度では海外グループ会社に支払う利子のうち独立企業間価格を超える部分については、税金計算上は損金算入が認められません。