海外コラム

海外事業拠点と現地の申告納税義務

ビジネスを海外で行うに当たり、現地に事業拠点を置くかどうかによって現地の税務は大きく変わります。現地に事業拠点を置いてビジネスを行う場合には、現地との結びつきが強くまた現地での申告事務が可能と考えられることから、基本的には現地の法人税の申告納税が必要となります。
現地のビジネス上の拠点を税務上は「恒久的施設(Permanent Etablishment、PE)」といいます。
例えば日本企業がベトナムでビジネスを行う場合、ベトナムにPEを置いている場合にはベトナム法人税の申告納税が必要となります。一方でベトナムにPEを置かず日本から輸出販売だけを行う場合には、通常はベトナム法人税の申告納税は不要となります。逆に外国企業が日本でビジネスを行う場合には、日本にPEを置いている場合には日本での法人税の申告納税が必要となります。

PEとは

具体的にはどのような拠点がPEとされるのでしょうか。租税条約では概ね以下のように定義されています。

  1. 支店PE・・・事業を行う一定の場所(①事業の管理の場所、②支店、③事務所、④工場、⑤作業場、⑥鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所)
  2. 建設PE・・・建築工事現場、建設工事もしくは据付工事等で一定の期間存続する場合
  3. 代理人PE・・・現地の代理人に専属的に営業活動を行わせている場合等

1.及び2.は、外国企業が直接な事業拠点を自ら進出先国に設置しているのだから現地での申告納税も必要ということです。一方で3.は外国企業が進出先国に自らの拠点を設置しているのではなく、現地の代理人を使って現地の事業活動を行っている状態となります。自社のために専属的に活動するような代理人が現地にいる場合には、実質的には自らの事業拠点(例えば支店)を持つ場合と同じ事業活動が可能となるため、当該現地代理人が外国企業のPEとなります。

PEとならない拠点

ただその一方で、現地に事業拠点を置いている場合であっても、そこで行われる活動内容が「補助的又は準備的な活動に過ぎない」場合には、例外的にPEとはなりません。具体的には、その拠点で商品・在庫の保管、展示、引き渡しのみを行っている場合や、商品の購入活動のみを行っている場合、情報収集活動のみを行っている場合が該当します。この場合には積極的な事業活動を現地で展開しているわけではないと考えられることから、例外的にPEには該当しないとされています。

では、米国の某巨大インターネット通販企業のように、注文を受けるサーバーを日本国外に置き、日本では倉庫からの商品引き渡しのみを行っている場合には、日本での法人税の申告納税は必要でしょうか?
実は以前は、日本で引き渡しのみを行っている場合には、規模等にかかわらず法人税は課されませんでした。当該倉庫はPEには該当せず、企業は海外から日本向け事業を行っているとされたわけです。

この点は日本のみならず各国でも問題視され国際的な議論になりました。その結果、たとえ商品の引き渡しのみであっても(つまり外形的には補助的活動のように見えても)、それが事業において本質的に重要な活動なのであれば「補助的又は準備的な活動とはいえない」という内容に法律・租税条約が改正されることとなりました。つまりPEの範囲が拡大されることとなったのです(日本では平成30年度税制改正にて対応※)。

この問題に象徴されるように、伝統的なPEの考え方は、インターネットビジネスの普及により修正を迫られています。

※上述の某巨大インターネット通販企業は、税制改正後も日米租税条約が改正されない限り、依然として日本の法人税は課されないと思われます。

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