海外コラム

海外取引の消費税①

これまでは主に法人税、所得税といった所得に対して課される税金について見てきました。

所得に課される税金は、人(個人も法人も)に帰属する所得を課税対象としているため、その人の居住地国及び所得の生じた場所の両方で課税されることが通常です。つまり同じ所得に対して、2か国で課税されるという二重課税が発生することが問題でした。

一方で消費税は、取引を行った人ではなく取引自体を課税対象としており、取引が行われた場所(国)で課税されます。このため二重課税の問題は生じません。もっとも、取引は二者の間で行われることから、国境をまたいだ取引の場合にはどちらの国で取引が行われたことになるのかを決める必要があります。
日本の消費税法では、国内において事業者が行った資産の譲渡等に消費税を課することとされています。つまり基本的には国内で行われた取引には消費税がかかります。取引が国内において行われたかどうかの判定を一般に内外判定といいますが、取引の種類に応じて以下のように判定されます。

1 資産の譲渡又は貸付けである場合
原則として、資産の譲渡又は貸付けが行われる時において、その資産が所在していた場所が国内であれば、国内取引となります。なお、船舶、航空機のような国をまたいだ移動が可能な資産や、特許権、著作権といった無形の資産については取引時の所在場所が明らかでないことから、資産を登録した機関が国内かどうかによって判定することになります。 それでもなお資産の所在場所が明らかにならない場合には、資産の譲渡又は貸付けを行う者の事務所等の所在地で判定することになります。

2 役務の提供である場合
原則として、役務提供が行われた場所が国内であれば国内取引となります。ただし、国際運輸、国際電話、国際郵便のように役務提供の場所が移動する場合には、その発送地や到着地等のいずれかが国内であれば、国内取引になります。なおいずれの国で役務の提供が行われたかが明らかでないものは、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で内外判定することになります。

輸出取引の免税

しかし国内取引に該当したとしても、必ずしも消費税が課されるわけではありません。海外旅行の航空券や商品を輸出する場合には消費税はかかっていません。これらは、消費税法上は免税とされているためです。これは、内国消費税である消費税は外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。消費税は、国内において消費される財貨やサービスに対して税負担を求めることとしている(このことを「消費地課税主義」又は「仕向地課税主義」といいます。)ことから、輸出して外国で消費されるものや国際通信、国際輸送など輸出に類似する取引については、消費税を免除することとされているのです。

輸入取引

では輸入取引はどうなるでしょうか。
輸入取引については消費税法上、「外国貨物を保税地域から引き取る者は、課税貨物につき、この法律により、消費税を納める義務がある。」とされています。つまり保税地域からの引き取りの際に消費税が課税されます。これは、輸入取引について消費税が課されないとしたら競争条件が公平にならないためです。国内業者から物品を購入した場合には消費税がかかる一方で、同じ物品を輸入した場合には消費税が課されないとしたら、国内業者は競争上不利になってしまいます。このため消費税がかかります。

以上が海外取引の消費税の基本的な考え方になります。

PAGE TOP