海外コラム

子会社の資金調達

一般に子会社に資金を入れる際、出資とするか融資とするかという問題があります。税務の観点でこれを考えてみます。
出資の場合には、子会社側では配当を親会社に支払いますが、配当は損金とはならないため子会社側では節税効果はありません。一方で受ける親会社側では、子会社配当は益金とはならなりません。
融資の場合には、子会社側では利子を親会社に支払いますが、利子は損金となるため子会社側では節税効果があります。一方で受ける親会社側では、利子収入は益金となります。この取り扱いは日本だけではなく多くの外国でも同様です。

では、海外子会社に資金を入れる場合を考えてみます。なお税率は国によって異なるためこの観点を加えます。どういうことが起こるか。結論を先に書いてしまうと、税率の高い国では融資による資金調達が、税率の低い国では出資による資金調達が、法人税を減少することができるということです。このことを利用し、例えば税率の高い国で融資により調達した資金を税率の低い国に出資の形で入れることにより、節税効果を得ることができます。

より具体的に、ASEAN諸国に設立した子会社(以下「ASEAN子会社」)が資金を必要としているケースを考えてみます。親会社は日本企業とします(以下「日本親会社」)。法人税率は、日本>ASEAN諸国です。よって先ほどの記載の通り、まず日本親会社が日本の銀行から「融資」により資金調達します。次に日本親会社からこの資金をASEAN子会社に「出資」の形でお金を入れます。ASEAN子会社はこれを元手に事業を行い、利益を配当として日本親会社に支払います。受領した日本親会社は外国子会社配当益金不算入制度を適用しその95%を益金不算入とすることができます。さらに、親会社は融資に伴う利子を銀行に支払っていますが、これを損金とすることができます。グループ全体の観点で考えると、税率が低いASEAN諸国で事業を行い、税率の高い日本では利子を損金算入し配当を益金不算入としています。つまりグループ全体で節税を達成しているわけです。

上の例は日本親会社がASEAN子会社に直接資金提供した場合ですが、間に中間会社をはさむことでより大きな節税を図るスキームを作ることも可能です。簡単に書くと、日本親会社が融資により調達した資金を、別の国に設立した子会社に出資し、さらにそこからASEAN子会社側に融資の形でお金を入れることで、ASEAN子会社側でも利子の損金算入ができるというものです。中間子会社側では受取利子が法人税の対象となってしまいますが、実質的な機能は資金の出し入れのみであることから主に税率の観点から国を選べばよく、税負担を抑えることが可能です。

上記はあくまでも税法の観点のみからの説明であり、実際には融資の利率や源泉税の有無、租税条約の適用関係も考慮する必要がありますが、法人税の観点に着目すると出資よりも融資により資金融通したほうが節税効果があり、さらには高税率国であればよりその影響が大きいということです。

上記はおもに日本から海外投資し、海外子会社が資金調達するケースを想定しています。この場合、日本側の利子の損金算入を直接のターゲットとしたような税制はまだありません。親会社は主に銀行等の第三者から借り入れますが、そのうちのどれだけが親会社自身の業務用資金になり、どれだけが海外子会社に私用されているのかを適切に把握することが難しいことや、利子は親会社側では損金となる一方で、受け手となる銀行側では益金になるため、トータルで見ると日本の税収に影響がないからと思われます。

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