海外コラム

平成31年度税制改正大綱が公表されました

平成30年12月14日に与党より「平成31年度税制改正大綱」が公表されました。
国際課税については以下の内容となっています。

過大支払利子税制

資金調達の際には、出資ではなく借り入れの方が支払利子を損金にできる分、所得が小さくなります。グループ企業間ではこれを利用して、過大な利子を外国の親会社等グループ会社に支払うことで日本の所得を小さくすることが可能となってしまいます。過大資本利子税制はこのような租税回避行為を防止するための制度です。

平成31年度改正では、対象となる利子の範囲が拡大され、さらに損金算入限度額が縮小されました。つまり、支払利子のうち損金とならない金額が大きくなります。

ただしその一方で、本税制の適用除外基準が緩和される予定です。改正前は海外のグループ会社に対する純支払利子等の額が1,000万円以下の場合には、本税制は適用されない(つまり全額損金とすることができる)とされていましたが、その枠が2,000万円に拡大されます(算定方法も変更されます)。

この改正は、平成32年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。

移転価格税制

海外のグループ会社と取引を行う場合に、グループ内であることを利用して通常とは異なる価格設定をすることで、日本の利益が小さくなり海外に所得が移転してしまうことがあります。移転価格税制とはこれを防止するための制度です。

近年では、企業の海外進出に伴い海外のグループ会社に特許や商標といった無形資産の使用許諾取引や譲渡取引が増加していますが、一方で有形資産(棚卸資産、固定資産)とは異なり無形資産の価値は類似取引等との比較で単純に算定できるものではなく、移転価格税制上の取り扱いが国際的に議論されてきました。

平成31年度改正により無形資産の定義が明確化される予定です。また、独立企業間価格算定方法としてDCF法が追加されます。ただしDCF法は将来収益予測に基づく価格設定方法ですので、将来予測と実績が大きく異なってしまう場合があります。今回の改正では、無形資産譲渡取引を行った際の将来予測とその後の実績値が20%超乖離した場合には、税務当局が追加課税できることとなります。

また、移転価格税制に係る法人税の更正期間及び更正の請求期間等が7年に延長されます(現行6年)。

これらの改正は、平成32年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)

タックスヘイブン対策税制は、軽課税国にペーパーカンパニー等経済活動の実態が無い会社を設立し、そのペーパーカンパニー等に利益を帰属させることによる租税回避行為を防止するための税制です。外国にペーパーカンパニーを有する場合には、別法人であるにもかかわらずその全社所得が日本の所得に合算されることとなります。

平成31年度改正ではペーパーカンパニーの範囲が見直され、以下の会社が除外されます。
 子会社の株式等の保有を主たる事業とする一定の外国関係会社
 不動産保有を主たる事業とする一定の外国関係会社
 資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社

この改正は、内国法人の平成32年4月1日以降に終了する事業年度の合算課税(外国関係会社の平成30年4月1日以降に開始する事業年度に係るものに限る)について適用されます。

東京オリンピック・パラリンピックへの参加者等の非課税措置

東京オリンピック・パラリンピックに出場する外国人選手の給与や報奨金等、外国人審判員等が大会関連業務により受ける給与等については、所得税を課されないこととなります。

また、大会の放送用の映像制作や競技の計測、競技結果の集計等の大会関連業務を行う外国法人が受ける使用料等については、所得税、法人税が課されないこととなります。

三角合併における外国親会社株式の交付

適格三角合併等を行う場合の被合併法人の株主に支払われる対価に、合併法人の発行済み株式の100%を間接的に保有する会社(間接親会社)の株式も含まれることになります。
合併法人とグループの究極の親会社との完全支配関係(100%支配関係)を維持したい場合や、合併法人の直接の親会社株式に流動性が無い場合等に対価として間接親会社の株式を発行したいといった場面での利用が想定されます。

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