海外コラム

短期滞在者免税②

日本の会社の役員や従業員が海外出張する場合、原則として出張先国において現地勤務に基づく給与所得課税が生じます。ただしその国が日本との租税条約を締結している場合には、短期滞在者免税という租税条約上のルールにより、現地の滞在期間が183日以下である等の一定の要件を満たした場合には、現地の給与所得課税を免れることができることになっています。
この点については2019.02.7の記事「短期滞在者免税」にて概要を記載しておりますが、同記事の最後において「なお183日のカウント方法については、租税条約ごとに違いがありますので、相手先国ごとに検討が必要になります。」と書きました。今回はこれについて少し触れます。

カウントの仕方について細かいことを気にし始めると実は色々と確認すべき点はあります。大きくは①到着日や出発日、現地で休日をはさんだ場合はどう数えるのか?という点、②課税年度単位(又は暦年単位)で183日の場合と継続する12ヶ月を通じて183日との違いは?という2点があります。

①到着日や出発日、現地で休日をはさんだ場合はどうするのか?
租税条約の解釈指針である「OECDモデル条約コメンタリー」によれば、到着日、出国日、現地の休日は滞在期間に含まれます(※)。
<滞在期間に含まれるもの>
1日のうちの一部、到着日、出国日、役務提供地国での土曜日・日曜日・国民的祝日・休日(役務提供前、期間中及び終了後)、役務提供地国での短期間の休暇、病気(当人が出国することができない場合を除く。)の日数、家族の病気や死亡、研修、ストライキ、ロックアウト、供給の遅延により役務提供地国で過ごした日数
<滞在期間に含まれないもの>
活動地国の外にある二地点間のトランジット、役務提供地国外で費やされた休暇、短期間の休暇(理由を問わない。)
(※)これらはOECDモデル条約コメンタリーによるものであり、国連モデル条約に基づく租税条約については解釈が異なる場合があります。

②課税年度単位(又は暦年単位)で183日の場合と継続する12ヶ月を通じて183日との違いは?
<課税年度単位(又は暦年単位)の場合>
課税年度(又は暦年単位)で日数を計算します。例えば出張期間が平成31年8月1日から平成32年1月31日だった場合、滞在期間は合計では184日となりますが、それぞれの年で分けて183日超となるかどうかを考えます。平成31年の滞在期間は8月1日から12月31日までの計153日間、平成32年は1月1日から1月31日までの31日間、このため両年とも183日を超えて勤務したことにならないため、短期滞在者免税の適用ありとなります。
<継続する12ヶ月の場合>
出張期間が開始する日から始まる12か月間において183日超か否かをカウントします。上記同様に出張期間が平成31年8月1日から平成32年1月31日だった場合で考えると、平成31年8月1日からの12か月間のうちの滞在期間は184日となります。よって短期滞在者免税の適用を受けることができません。この結果滞在先の国でも納税義務を免れることができません

以上のように、短期滞在者免税では国によってカウントの仕方が異なることがありますので、長期の海外出張を行う場合には注意が必要です。

PAGE TOP