海外コラム

非居住者の株式譲渡

前回の記事では非居住者が内国法人から配当金を受け取る場合について記載しました。

では、非居住者が配当を受け取るのではなく、保有していた株式を売却する場合にはどうなるでしょうか。もう少しイメージしやすく書くと、日本の会社の株式を保有したまま海外転勤等により海外に移住し、日本の税法上の非居住者になった後に、その保有する株式を売却する場合です。

非居住者が日本で税金を課せられるのは、国内源泉所得がある場合です。そして内国法人の発行する株式の譲渡による所得、つまり売却益は国内源泉所得とされています。とはいえ、全ての株式が対象というわけではなく、例えば以下のような株式の譲渡のみが対象となっています。

● 大口株主による株式の譲渡(「事業譲渡類似の株式等の譲渡」といいます)
・・・譲渡以前に発行済み株式総数の25%以上の株式を保有していた大口株主が、5%以上を譲渡した場合
● 日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得
● 日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得
(一部を例示しています)

非居住者がこういった株式の譲渡を行った場合には、確定申告が必要となります。なお以前の記事で書いた通り、非居住者が確定申告書を提出するためには国内の納税管理人を経る必要があります。

ただしこれらに該当する場合であっても、滞在先の国と日本との間に租税条約が締結されている場合には、日本で課税されないことがあります。ただし滞在国側では全世界所得の一部として課税対象となる可能性があります。

なお以前の記事で書いた通り、国外転出時課税制度により、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の株式等を所有している場合には、国外転出時にその株式を譲渡したものとみなして、含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されることになっています。

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