海外コラム

海外転勤後に不動産を賃貸・売却した場合

海外転勤等で日本に不動産を残したまま出国する場合があります。海外転勤の予定期間が1年以上の場合には、海外転勤者は税法上は非居住者とされ、会社から支払われる給与については原則的には日本では課税されず転勤先の国において課税されることになります。
では日本に残した不動産については、何らかの課税は生じるでしょうか?

単身赴任による海外転勤で家族が引き続き日本の家で生活している場合や、家族そろって海外に引っ越したけれども日本の家は一時帰国時に使用するためにそのままという場合には、日本で生じる税金は固定資産税・都市計画税のみとなります。これらの税金は、毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となっており、所有者が日本の居住者なのか非居住者なのかは問われていません。

一方、使わない不動産を遊ばせておくのももったいないし、賃貸に出す、あるいは思い切って売却する場合もあるかと思います。このような場合には、外国に住んでいながらも日本の不動産から収入を得ることになります。そのため、非居住者というステータスでありながら、日本において確定申告をする必要がありますので注意が必要です。租税条約による減免措置があるか期待したくなりますが、残念ながら不動産関連所得に関しては減免措置はほぼありません。不動産関連所得はその不動産が所在する国との物理的な結びつきが強い所得であるため、課税権を放棄する国はほとんどないからです。またもし減免措置を認めてしまうと、居住者である不動産オーナーと非居住者である不動産オーナーとの間で競争上の不均衡が生じてしまうためです。

なお、賃貸又は売却した相手が、その不動産をオフィスとして使用する等の一定の条件を満たす場合には、賃貸料又は売却代金から所得税等が源泉徴収されます(2019.3.6の記事をご参照下さい)。つまりオーナーは賃貸料又は売却代金から税金を差し引かれた金額のみを手取りとして受け取ることになります。この場合には、確定申告をすることで源泉徴収された税金の一部が還付されることがあります。上述の通り不動産関連収入がある以上、日本で確定申告することは義務になりますが、還付の可能性があるという観点からも確定申告すべきです。

日本の課税関係はここまでですが、忘れてはいけないのは転勤先の国における課税関係です。国によっては日本で得た所得についても現地で申告する必要があります。この点は現地の税法に従う必要がありますので、現地の会計事務所等に相談することをおすすめします。なお、日本で不動産収入を得ていることをたとえ申告しなくても、現地の税務署にはバレないのでは?と思う向きもあるかもしれません。しかし現在では各国の税務当局間の情報交換の仕組みが確立されており、日本に残してある金融口座情報について現地の税務当局が把握することは可能となっています。またそうではなくても、現地でそのことを知った他人が密告する可能性もあります。脱税に関する各国の法制度は様々ですが、逮捕・拘留の可能性もあるかもしれません。したがって現地の法制度に従った誠実な対応を心がけることが望ましいです。

 

PAGE TOP